なぜあの社員は情報共有をしないのか?組織の情報共有が上手く行かない理由と対処法

この記事でわかること
・情報共有が上手くいかない組織の原因とは
・情報共有をしたくなる仕組みの作り方
・情報共有を習慣化できない人への対応方法
・環境マネジメントの考え方

この記事は、ネットで言われている「一般論」に対して、組織マネジメントの専門家はどう考えるのか?をインタビューし、私たちがより実践しやすい具体的なアクションを聞き出す企画です。

今回のテーマは「情報共有」(記事のアーカイブはこちら)。 

情報が溢れる現代において、また情報の伝達のスピードが上がった背景がある中で、組織内でいかに情報共有をスムーズに行うかを課題に感じている方も多いのではないでしょうか。前回は情報共有のメリット、情報共有をしないことで起こるデメリットをご紹介しました。今回は情報共有が上手くいかない理由について深掘りしていきます。

登場人物プロフィール

【インタビュアー】MEGUMI

とある女性向けのサービスを行なっている経営者。それなりの社員を抱える規模でビジネスをしているが、組織の人間関係のトラブルや、離職率の上昇など、組織マネジメントにはまだまだ課題のある状況。

今まで感覚的に行なっていたけれど、改めて、しっかりと学んだ方がいいのかも…と考えていた矢先に、この記事の企画をいただき、インタビュアーとして参加させていただきながら、組織マネジメントを学ばせていただくことになりました。

【専門家】嶋津良智先生

日本唯一の『上司学』コンサルタント。「『あなたのもとで働けてよかった』をすべてのリーダーへ」を理念に、中小企業のための、人づくり、組織づくりに特化をした、スクール形式では日本一のビジネススクール『リーダーズアカデミー』を経営。

  • 一般社団法人日本リーダーズ学会 代表理事
  • リーダーズアカデミー 学長
  • 早稲田大学エクステンションセンター講師
  • 他、経歴・著書多数

<プロフィールはこちら>

組織における情報共有のメリットについて、教えてください!前回は、組織における情報共有のメリットについて理解できました。弊社でも情報管理ツールや情報を共有するツールは活用していますが、人によって情報の入力度がバラバラになるなど、課題があります。今回は、情報共有がなぜ上手くいかないのか、教えてください。
組織における情報共有のメリットについて、教えてください!

分かりました!よろしくお願いします!

情報共有が上手く行かない理由

情報共有を行うことで、意思決定のスピードが上がり、マネージャー層は意思決定の数を減らすことができるということが分かりました。ただ社員の中にはなかなか情報を共有してくれない人もいます。例えば、営業の日報ツールへの入力率は非常に低いです。なぜ情報共有が上手くいかないのでしょうか?

この理由は非常にシンプルで、メリットを感じられていないからではないでしょうか。どのお客さんを訪問して、何を話して、見込み率はどのくらいで…といったデータを単に入力しろと言われても、やはり面倒に感じますよね。

そうですね。面倒な気持ちもよく分かります。

でもプライベートになるとどうでしょうか。誰に強制されているわけでもないのに、InstagramやFacebookで自分の情報をアップしていますよね?

確かに!むしろ積極的に情報共有をしていますね。

この差は、興味関心の差であり、メリットを感じているかどうかです。だから社内で情報共有を促すためにも、情報を提供するメリットや楽しさを作ってあげる必要があります。参考にしやすいのは、マッチングアプリです。マッチングアプリでは、彼氏が欲しい人と彼女が欲しい人がそれぞれ情報を提供し、マッチングさせますよね。それと同じように、情報が欲しい社員と情報提供したい社員をマッチングさせる仕組みを構築する必要があります。

情報を提供したことで、情報が欲しい人にしっかり届く。それが見える化されていれば、情報を共有するメリットを実感として持つことができますね。誰かの役に立つ情報なんだと分かると自主的に情報共有したくなります。

情報を提供した人が報われる仕組みは絶対に必要だと思います。

人事評価制度の項目を設けても良いでしょうか?

良いですね。仕組みを浸透させるフェーズでは、インセンティブを設けても良いですよ。

面倒くさがり屋な社員はどう対応すべき?

何度リマインドしても「やる」と言いながら後回しにしてしまう人や、どうしても情報共有を習慣化できない人もいますよね。そういった社員についてはどう対応するのが良いでしょうか。

その人が情報共有しないことが、どの程度組織に影響があるのかにもよりますよね。大した影響がないんだったら、100%を目指さないってことも大切です。別に無視するとかじゃなくて、継続して教育は行いますし、情報共有をしなかったことによるマイナス評価を加える等、何らかの形で対応することは必要なのですが、会社としてやるべきことをやっているのに、そういう人が出てしまうというのは仕方ないことでもありますよね。

他人は変えられないとも言いますしね。無理強いすることで社員のストレスになるのも不本意です。

ただ、その人が情報共有しないことがすごく影響があることなのであれば、その影響度をしっかり理解させて、やらせる環境作りをしていかないといけません。そこでポイントとなるのは、「環境マネジメント」です。

環境マネジメントとはどういったものなのでしょうか?

本人の意思に頼るのではなく、引き出したい行動を相手から引き出す環境を作るということです。次の章で詳しく解説しますね。

引き出したい行動を自然に引き出す「環境マネジメント」

環境マネジメントをしていく上でのポイントは、以下の3つです。

①対象者を明確にする
②相手から引き出したい行動を明確にする
③行動を本人自らやろう、やりたい、やらなければいけないと思ってもらうためはどうしたら良いかを考える
例えば、夏に幼稚園・保育園のバスで園児が残っているのを見逃してしまい、熱中症になってしまうということがありますよね。

はい。絶対に防ぎたい事故ですが、ドライバーが慣れによって確認を怠ってしまうんですね。

ここでの対象者は、ドライバーですね。引き出したい行動は、バスの中を見回って、降ろし忘れている子どもがいないかどうかをチェックするということです。これをやらなければいけないと思ってもらうために、エンジンを切った際、違和感のある周波数の音のブザーを鳴るようにします。しかしブザーのスイッチを手元に用意しておくと、慣れてくると見回りをせずにスイッチを切ってしまうようになります。そこで、ブザーのスイッチをバスの一番後ろに設置します。

スイッチを切るために自動的にバスの後ろに行くのですね!

さらにスイッチを切った後、戻ってくる時にダブルチェックすることができます。

ドライバーは意識せずとも、チェックだけでなく、ダブルチェックまで出来る環境ですね。

最近では駅のホームで、平行ではなく、ホームの垂直にベンチが置いてある駅がありますよね。あれも環境マネジメントの思考に基づく取り組みなんですよ。

渋谷駅などで見たことがあります!

垂直にベンチを置くのは、酔っ払いの線路への転落防止という目的が含まれているんです。酔っ払いにどんなに気をつけるように言っても、話を聞いてやいません。しかし線路への転落の大半は酔っ払いなのだそうです。ホームに電車が来たと勘違いして、ベンチから立ち上がってホームを歩いてしまうからです。そこでベンチを垂直に置くことで、歩いても線路に落ちないようにしたんです。この取り組みで転落は激減したそうです。

なるほど。コロナ禍ではソーシャルディスタンスを保つために線を引いているお店が多かったですが、線が引いてあるだけで自然とその線の上に立っていました。これも環境マネジメントですね。他人は変えられないけれど、環境は変えられるのですね。

その通りです。情報共有にあたっても、情報共有をしてほしい社員がどのようにしたら自然と行動の中で情報共有を行えるのか、環境に着目して考えてみてはいかがでしょうか。

この章のポイント
・情報共有をしないのは、面倒で、メリットを感じないから
・情報が欲しい社員と情報提供したい社員をマッチングさせる仕組みを構築する
・人事評価やインセンティブで情報を提供した人が報われるようにする
・情報共有がどうしても出来ない社員。影響度が低い場合は、100%を目指さない
・意思に頼るのではなく、引き出したい行動を相手から引き出す環境を作る
・環境マネジメントのポイント
①対象者を明確にする
②相手から引き出したい行動を明確にする
③行動を本人自らやろう、やりたい、やらなければいけないと思ってもらうためはどうしたら良いかを考える

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