半年に1回の評価制度は少なすぎ?!社員の生産性を上げるために「仮評価」を毎月実施せよ

この記事でわかること
・社員の生産性を上げるための評価制度の運用方法
・部下の評価を上げるために上司がすべき仕事
・月に1度の面談を行う前に、上司が準備すること
・上司が部下の評価を正しく行えるよう、会社がやるべき仕組みづくり

この記事は、ネットで言われている「一般論」に対して、組織マネジメントの専門家はどう考えるのか?をインタビューし、私たちがより実践しやすい具体的なアクションを聞き出す企画です。

今回のテーマは「評価制度」(記事のアーカイブはこちら)。 

これまで、評価制度の重要性や種類、評価制度を導入するための具体的なステップについてご紹介してきました。最終回となる今回は、社員の生産性が上がる評価制度の運用方法についてお話を伺っていきます。

登場人物プロフィール

【インタビュアー】MEGUMI

とある女性向けのサービスを行なっている経営者。それなりの社員を抱える規模でビジネスをしているが、組織の人間関係のトラブルや、離職率の上昇など、組織マネジメントにはまだまだ課題のある状況。

今まで感覚的に行なっていたけれど、改めて、しっかりと学んだ方がいいのかも…と考えていた矢先に、この記事の企画をいただき、インタビュアーとして参加させていただきながら、組織マネジメントを学ばせていただくことになりました。

【専門家】嶋津良智先生

日本唯一の『上司学』コンサルタント。「『あなたのもとで働けてよかった』をすべてのリーダーへ」を理念に、中小企業のための、人づくり、組織づくりに特化をした、スクール形式では日本一のビジネススクール『リーダーズアカデミー』を経営。

  • 一般社団法人日本リーダーズ学会 代表理事
  • リーダーズアカデミー 学長
  • 早稲田大学エクステンションセンター講師
  • 他、経歴・著書多数

<プロフィールはこちら>

前回「評価制度は設計1、運用9」と教えていただきました。具体的に、社員の生産性を上げるためにはどのように評価制度を運用していくべきでしょうか?

半年に1回の評価制度で社員の生産性を上げるためには

日本の多くの企業では年に1回、もしくは半年に1回が評価のタイミングになると思います。しかし評価のタイミングになって、社員1人1人の半年間をどこまで鮮明に思い出せるでしょうか。

メンバーが何人もいる中で、全員の仕事ぶりを覚えているかと言うと…難しいですよね。どうしても営業獲得数など結果で見てしまい、過程を評価できていないというジレンマもあります。

僕の会社では、月に1回、仮評価というものを行っていました。評価制度の評価指標に基づいて現状の評価を行い、半年後の目標に向けて今どの地点にいるか、目標を達成するにはどういったことをやるべきかを上司と本人とで明確化するものです。

月に1回となるとかなり高い頻度ですよね。毎月、自分の現在地を知ることができると共に、上司は部下の成長ぶりをリアルタイムで知ることができますね。

上司は会社から社員を預かっているわけですから、出来るだけ生産性を高くハイパフォーマーな人材として育て上げなければいけません。半年間どう成長するかを社員に任せるのではなく、半年間でより良い仕事、言い換えればより良い作品を仕上げる気持ちで、毎月の指導や面談をやっていく必要があると思います。

上司も社員と良い作品を作る、くらいの気概で臨まなければいけませんね。社員も半年後にいきなり評価が言い渡されるよりも、毎月評価制度に対する現在の進捗が分かった方が納得感が高そうです。

自分の成長も実感できますよね。それも評価制度の1つの役割ではないでしょうか。

画一化した評価制度に疑問を持つ社員もいます。社員それぞれの個性や強みを評価するための評価制度のポイントはありますか?

どんなに良い個性や強みを持っていても、会社の中では会社の実績に繋がらなければいけません。評価制度の中で個性や強みを評価するというより、個性や強みを活かしていかに実績に繋げるか。そこを上司と本人とで考えていくべきではないでしょうか。

組織のパフォーマンスを上げるために上司がすべき仕事

こうやってじっくり考えてみると、上司はかなりやるべきことがありますね。

上司は、チーム・組織のパフォーマンスを上げるために全ての時間を使うべきです。僕個人の考えとしては、プレイングマネージャーというのは成り立たないと思っています。部下との基本的なコミュニケーションはもちろん、パフォーマンスを上げるためにはどうしたら良いか、評価制度の中で良い評価を得るには何をすべきかを考え、部下との面談や指導を行うのが、上司の仕事だと思います。

月に1度部下と面談するだけでも、人数が多いチームであればあっという間に時間が埋まっていきますね。

そうです。ですから、その上でプレーもしてプレーの成果も求めるというのは無理があるのではないかなと思います。組織のパフォーマンスをいかに上げていけるか。そういったことができるリーダーが必要だと感じます。

誰が上司になるかによって、社員のパフォーマンスが大きく変わることもあると思います。

80対20の法則と言われるように、20%の人はどんな会社に行こうが、どんな人が上司になろうが、自分で頑張ることができます。しかし80%の人は、どんな会社に行くか、誰に教わったかでその人のキャリア、人生が大きく変わってしまいます。人材を育てるリーダーはその責任を持っていなければならないし、会社はそのためにリーダーが力を注げる環境を作らなければなりません。

リーダーが部下のための時間を最優先にできる環境を、会社が作るというのも重要ですね。

そうですね。会社のリーダーが常にマネジメントもプレイヤーとしても仕事に追われ続けていたら、部下は管理職になりたいと思わないでしょう。そういった点でも、それぞれの役割に集中できる環境は大切です。

上司が面談までに準備すべき「記録」とは

月に1回、上司が面談をするとして、なかなか社員のパフォーマンスを引き上げる指導まで出来ない人も多いと思います。現状の把握で終わってしまったり、自分自身の経験談を語って終わってしまったり。上司はどのように導いてあげるのが良いのでしょうか。

環境マネジメントという考え方を活用すると良いと思います。指導する側の上司・リーダーがそう行動したくなる環境・仕組みを作るんです。例えば、先ほどお話しした月に1回の仮評価を行う場合、どの仕事がどの項目に繋がったのか、しっかり説明できるように準備しなければいけませんよね。そのためには、日々の指導の記録を残しておく必要があります。

指導に対して部下がどんな行動を行ったのか、それに基づいて評価が行われていくわけですね。

そうです。そのために、僕のリーダー育成のためのスクール「リーダーズアカデミー」では、部下カルテというものを渡しています。いつ、どのような指導をして、その結果がどうだったのか。社員はどんな反応だったのか。そういったものを記録に残しておきます。学校の部活では部員に日誌を提出させて、顧問がチェックやフィードバックを行いますが、それと同じ感覚ですね。

日々の指導を細かく記録に残すのですね。

そうすれば、評価においても納得感のある説明をすることができます。社員のためにもなりますし、リーダー自身のためにもなりますよ。

指導記録を残す、それに基づいて仮評価に対する説明を行う。これを会社としても仕組み化しなければいけないですね。そう考えると益々、嶋津さんの仰っていた「上司は、チーム・組織のパフォーマンスを上げるために全ての時間を使うべき」というお言葉に納得します。こういった細かい運用まで含めて、評価制度なのですね。

評価制度は社員の給料にも関わりますから、つまり社員の人生を左右します。それが上司の裁量や曖昧な基準で決まってしまうということはあってはならないことだと思います。会社としては平準化できる仕組みを作り、自然と上司が正しい判断軸で指導していけるよう、環境を作っていくべきです。

評価制度というと制度の設計に目が行きがちですが、いかに運用と環境づくりが重要かを学びました。ありがとうございました。

この章のポイント
・評価制度は半年に1回で終わりではない。月に1回「仮評価」を行い、評価に向けた現在地を明確にする
・個性や強みはそれ自体を評価するのではなく、実績に繋げるために活かす方法を考える
・上司はチーム・組織のパフォーマンスを上げるために全ての時間を使う
・80%の人は、どんな会社に行くか、誰に教わったかでその人のキャリアが大きく変わる
・部下カルテに指導記録を残し、それに基づいて「仮評価」を行う
・評価が平準化される仕組みを会社が作る

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